この記事では、妊娠中・出産後にプレゼントを贈りたい人に向けて、妊娠から出産までの基本情報・注意点・プレゼントのポイントなどをご紹介しています。
妊娠前・妊娠中・出産後・育児は、その人ごとに症状や環境が異なるため、その状況に合ったサポートが大切です。なかには「 妊娠前・妊娠中は病気ではない 」と軽視する人もいますが、” だからこそ理解や協力が得られずに大変 ”だと思います。
専門家に相談しながら過ごすことが重要となりますが、この記事を通して、少しでも大切な人が笑顔になるプレゼント選びの参考になれば幸いです。
妊娠期間の数え方と出産までの流れ
妊娠期間の数え方には、受精初日を1日目として満日数・満週数をあらわす受精後胎齢と、最終月経初日を1日目として満日数・満週数をあらわす月経後胎齢の2種類があり、日本では一般的に月経後胎齢で出産予定日を計算しています。
計算方法は、最終月経を0週0日として、1週を7日、40週の0日が出産予定日となります(280日目/約10か月)。
ただし、同じ週数であっても月経周期の長さによって妊娠の経過に個人差があるため、妊婦検診のときに胎児の発育度合いから逆算しておよそ受精日(2週0日)となるように微調整されている場合もあります。
妊娠中は、4~15週を妊娠初期・16~27週を妊娠中期・28~40週を妊娠後期と段階を分けられており、0~3週頃までを妊娠超初期とも呼びます。
出産は、37週から41週までの間に出産した場合は正期産・22~36週までの間は早産・42週以降は過期産とされ、その人に合わせて経腟分娩と帝王切開の方法で産みます。
妊娠2ヵ月のときは身長約1cm・体重約2gですが、出産時には身長約50cm・体重約3,000gまで成長しています。

🍀 よつばメモ 🍀
WHO(世界保健機関)の妊娠期間定義は280日±15日といわれているよ。受精後胎齢と月経後胎齢の関係は「 受精後胎齢=月経後胎齢-2週 」で表せるよ。

🍀 よつばメモ 🍀
ネーゲレ換算法で計算すると、簡易的に妊娠期間を知ることができるよ。最終月経初日から3を引いて出産予定月(引けない場合は9を足す)、最終月経初日に7を足して出産予定日を求める方法だよ。月経周期が28日で算出されているから、周期が27日の人は1を引いて、30日の人は2を足す必要があるよ。
体調管理の必要性
妊娠後、赤ちゃんの身体は15週までに諸器官の原型が形成されるため、妊娠初期の2ヵ月~4か月は体調管理がとても重要です。
妊娠1か月は胎嚢という袋に入った胎芽の状態で超音波検査にも反応しませんが、妊娠2ヵ月の6週頃には心音がきこえて 7週には2頭身に成長します。妊娠3か月の8週以降は呼び名が胎児に変わって 骨・筋肉・内臓を形成していき、妊娠4か月の15週までには諸器官の原型と胎盤が完成して栄養・酵素を得ながら動きも活発になります。
そのため、葉酸など妊娠前から推奨されている栄養素もあり、妊娠中は食材・習慣に注意してたんぱく質・葉酸・鉄分・カルシウム・食物繊維などをバランス良く摂取することが大切です。
また、妊娠中は子宮内の赤ちゃんに影響を及ぼす危険性があることから生ワクチンが使用できません。不活化ワクチンのインフルエンザは予防接種できますが、風疹・麻疹・おたふく風邪・水ぼうそう・ロタウイルス・結核などは接種できず、妊娠中は免疫機能が低下しやすくなっているので感染予防を徹底する必要があります。
抗体・感染症・生殖機能・病気など、妊娠・出産に影響を与える疾患の検査ができるブライダルチェックも実施されており、妊娠を希望されるご夫婦におすすめです。
妊娠前から気をつけたいもの
風疹の抗体
抗体免疫が不十分な状態で妊娠20週頃までに感染すると、先天性風しん症候群のリスクが高まります(聴力障害、視力障害、先天性心疾患など)。
現在では2回の定期予防接種が実施されていますが、年齢によっては過去に0回・1回しか予防接種していない可能性があります。予防接種後は2ヵ月間の避妊が必要となり、妊娠中は予防接種ができません。1回接種をしても100%確実に抗体を得るわけではなく、妊娠中は免疫が低下して感染リスクも高まるため、厚生労働省も抗体検査と予防接種を勧めています。
葉酸の摂取不足
葉酸とは、プテロイルモノグルタミン酸およびその派生物の総称で、水溶性のビタミンB群に属しています。ビタミンB12とともに赤血球を作る働きもあります。
妊娠1か月前~妊娠3か月までの間に1日400µgの葉酸を摂取すると、二分脊椎症や無脳症などの神経管閉鎖障害発症のリスクが低減されるといわれています。
ほうれん草・ブロッコリー・サツマイモ・大豆・バナナ・いちごなどの食材に多く含まれていますが、水溶性の特性で調理中に栄養を損失しやすいため、食事に加えて栄養補助食品等からプテロイルモノグルタミン酸として葉酸を摂取するよう推奨されています。
摂取量の目安は、妊娠前・妊娠中・出産後の時期や症状によって異なりますが、年齢によって1日900~1,000µgまでと上限もあり、過剰摂取に注意する必要があります。
BMI(肥満度の指標)
BMIが25.0以上の高い状態になると、妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・巨大児・肩甲難産などのリスクも高まりやすく、日頃から摂取量だけではなく塩分や糖分にも注意する必要があります。
その人ごとに症状も異なるため、専門家と相談しながら体調管理することが大切です。
※BMI=体重kg÷(身長m×身長m)
喫煙
ニコチン成分による血管収縮作用で栄養・酵素が送られにくくなり、早産・前期破水・常位胎盤早期剥離・発育不良・母乳分泌などに影響します。喫煙はもちろん、他人の煙を吸う受動喫煙も影響を及ぼすため 周囲の協力が大切です。
妊娠中に気をつけたいもの
リステリア菌を含む食品の管理
リステリア食中毒とは、Listeria monocytogenes による食中毒のことで、主にナチュラルチーズ・生ハム・スモークサーモンなど未加熱の調理済み食品(ready-to-eat食品)が対象になります。妊娠中は、ホルモンの影響で消化・免疫機能が低下しやすくなるといわれており、食中毒・早産・死産などのリスクがあります。加熱が必要な食品は十分に火を通す、冷蔵庫内であっても長期保存をしないようにする、調理時の消毒・衛生面を徹底するなどの予防がポイントです。
鉄分の摂取不足
妊娠中は、胎児に優先的に鉄分が送られるため貧血になりやすいといわれており、鉄欠乏性貧血による胎児の低体重・早産・流産などのリスクがあります。
動物性食品のヘム鉄ではレバー類・赤肉・あさり・牡蠣など、植物性食品の非ヘム鉄では大豆・ほうれん草・小松菜・木綿豆腐などに多く含まれています。
動物性食品のヘム鉄は吸収率が高いため過剰摂取に注意も必要ですが、鉄分はビタミンC・たんぱく質と一緒に食べると吸収率が良いといわれています。
動物性ビタミンAの過剰摂取
ビタミンAとは、レチノール・レチナール・レチノイン酸の総称で、脂溶性ビタミンに分類されています。
主要成分のレチノールには、目・皮膚の粘膜を健康に保つ、抵抗力を強めるなどの働きがあります。
動物性に含まれるビタミンAは、肝臓や脂肪組織に蓄積されやすく、植物性に含まれるビタミンAのように余分量を尿排出できないため、過剰摂取による胎児の先天奇形リスクに注意が必要です。
植物性のビタミンAは、にんじん・ほうれん草・かぼちゃ・ブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれています。
🍀 よつばメモ 🍀 植物性のβカロテンは、摂取後、体内の環境に合わせて成分を必要な分だけプロビタミンAに変化させる特性があるよ。余分な量は尿として排出されるから、ビタミンAを過剰に摂取してしまうリスクは少ないといわれているよ。一方、レバー類や卵類に含まれるレチノールなどの動物性ビタミンAは、体内に蓄積されやすくて、食事やサプリの過剰摂取による健康・胎児への影響に注意する必要があるよ。
カルシウムの摂取不足
カルシウム不足による骨・歯・血液・体液・神経組織の形成に影響します。牛乳・乳製品・納豆・大豆類・小魚・切り干し大根などに多く含まれています。
ビタミンDと一緒に食べると吸収率が良いといわれていますが、体内に蓄積されやすい脂溶性ビタミンのため、過剰摂取には注意が必要です。
食物繊維の摂取不足
妊娠中は、つわり・運動不足・ホルモン・腹部の圧迫などの影響で便秘や痔になりやすいです。
玄米・ごぼう・サツマイモ・こんにゃく・切り干し大根・キノコなどの食材に多く含まれていますが、食物繊維にも不溶性と水溶性の種類があるため、その人に合ったバランスを保つことも大切です。
飲酒
胎児性アルコール症候群による胎児の発育障害、母乳分泌による乳児への影響があります。
飲み物を贈る場合は、アルコール度数の表記に注目することをおすすめします。日本の基準では、アルコールを含んでいないものを0.00%、ノンアルコールを0.0%~1.0%、アルコールを1.0%~と区別して表記されており、ノンアルコールの場合も微量にアルコールが含まれています。体内に蓄積されることで胎児や乳児に悪影響を及ぼす可能性があるため、「アルコール0.00%表記」の商品を選ぶ方が安全です。
みりん・料理酒などのアルコールは、調理するタイミングや量によって蒸発しきらない場合もあるため、一度の過剰使用には注意が必要です。
カフェイン
過剰摂取による発育不良・早産・流産に影響します。
コーヒー・緑茶(玉露)・紅茶・ウーロン茶などに含まれており、コーヒーであれば1日1~2杯と食品によって摂取量の目安が決められています。
🍀 よつばメモ 🍀 ①デカフェ(カフェインレス) 原料にカフェインを含んで、90%以上を除去したものだよ ハーブ茶・ルイボス茶・麦茶など、原料にカフェインが含まれていないものだよ
②ノンカフェイン
ポリフェノール
アントシアニンや大豆イソフラボンなどポリフェノールの一種は、有害物質の活性酸素を無害な物質に変える抗酸化作用もありますが、妊娠中の過剰摂取による動脈管早期収縮など、胎児の心疾患に影響を及ぼすリスクもあります。
カフェインを含んでいないルイボスティーや黒豆茶にも多く含まれているとされ、妊娠後期の8ヵ月以降はポリフェノールを含む商品や摂取量に注意が必要です。
また、大豆イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きがあり、過剰摂取によるホルモンや胎児の異常に影響を及ぼす可能性があります。
水銀の過剰摂取
人体に悪影響を及ぼすといわれている水銀の過剰摂取により、赤ちゃんが音を聴いた時の反応が1/1,000秒以下のレベルで遅れる可能性があります。
海中には水銀が溶け込んでおり、食物連鎖によって大きな魚により多くの水銀が蓄積されています。そのため、キダイ・金目鯛・メカジキ・本マグロなどにメチル水銀が多く含まれ、1週間の目安摂取量が決められています。
ツナ缶・サケ・アジ・サバなどは特に心配する必要はないといわれています。
その他
水分不足・添加物の多い食品・刺激物の過剰摂取・身体の冷え・無理なダイエット・激しい運動・睡眠不足・ストレスなどにも注意が必要です。
プレゼントを贈るタイミング
🍀 妊娠中:安定期の5~7か月
🍀 出産後:2~3週間
妊娠報告をされたときはすぐにお祝いを贈りたくなりますが、妊娠されている人の体調や環境に対する思いやりも大切です。一般的に、妊娠5~7か月頃(16週~27週頃)が安定期のため、プレゼントを贈りやすい時期だといわれています。プレッシャーを感じやすい人、万が一の出産リスクがある人には、出産後2~3週間に贈ると喜ばれやすいかもしれません。出産祝いのタイミングとしては、生後7日目に命名する”お七夜”から生後1か月後頃に健康を祈る”お宮参り”までの間が一般的ですが、出産後はバタバタされている可能性があります。
プレゼントの相場
🍀 出産前:3,000~5,000円
🍀 出産後:3,000~10,000円
出産前は3,000~5,000円、出産後は3,000~10,000が相場だといわれていますが、間柄によります。
一般的に、お返しの内祝いは1/3~半額とされているため、あまり高額になると相手に気を遣われてしまいます。
気をつけたいプレゼント
🍀 安産祈願
🍀 ベビー用品
🍀 カフェインを含む飲食物
🍀 締め付けのある衣類
🍀 身体を冷やすもの
🍀 香りが強いもの
🍀 刺激が強いもの
やさしいプレゼント
🍀リラックスできるアイテム(アロマ・快眠グッズ・音楽)
🍀心身をあたためるアイテム(入浴剤・膝かけ)
🍀ノンカフェインの飲み物
🍀保湿クリーム
🍀クッション
🍀タオル
🍀メッセージカード
🍀プリザーブドフラワー・ハーバリウム
※生花は、免疫が低下しているときに細菌感染のリスクがあります。
🍀その他
おまけ
プレゼントを贈るとき、その人に自覚はなくても相手を傷つけてしまうことがあります。特に、妊娠中は心身が変わりやすいので、相手の立場になって寄り添う気持ちが大切だと思います。
あくまで参考程度ですが、夫が妻になって妊娠から出産までを体験する漫画作品を見つけました。ギャグ要素もあるので好みは分かれそうですが、読み進めていくと自分の問題としてイメージしやすい内容もあり、リンクを貼りました。
・Palcy,朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート,車谷晴子
【 参考文献 】
・公益財団法人長寿科学振興財団,健康長寿ネット 葉酸の働きと1日の摂取量
・厚生労働省,食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
・こどもとおとなのワクチンサイト,年齢でみる不足している可能性があるワクチン(キャッチアップスケジュール)
・こどもとおとなのワクチンサイト,ワクチンと病気について 妊娠可能年齢の女性と妊婦のワクチン
・厚生労働省 e-ヘルスネット[情報提供],葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果
・医療専門家がお届けするママパパに役立つ情報サイトハピサポ,ブライダルチェックの内容と受ける時期について
・ヒロクリニック,妊娠期間はどれくらい?正しい週数と出産予定日の数え方
・ユニチャームmoony,出産予定日はいつ?計算で簡単にわかります
・三井住友カード,意外と大切、出産祝いのマナー!贈る時期や金額、メッセージなど基礎知識を解説!
・須田剛(2017)『この一冊であんしん はじめての妊娠・出産辞典』竹岡正人監修,朝日新聞出版
・萩野善之(2018)『いつでもどこでも知りたいことがすぐわかる冠婚葬祭「きちんとマナー」ハンドブック』岩下宣子監修,株式会社主婦の友社